仕事に行きたくないし、なんだか鬱ぽい。好きな事すらやりたくない。横になって漫画でも読もうと思っても、努力だとか友情とかそういった上昇志向のメッセージを含んだものが多くて疲れる。そんな気分になることありますよね。でもこの漫画は結構良かったです。
Contents
まだ、生きてる・・・/本宮ひろ志
うわ、絵に特徴あるな。と思ったのが最初の印象です。作者がサラリーマン金太郎を書いた人でもあるので妙に納得しました。でも、内容はすばらしく、あっという間に読み終えました。
どんな話か
会社を退職した主人公の岡田憲三はハローワークに通うが、仕事でパソコンを使う事ができない上、高齢の為、受付担当にさえ相手にされない。(記載されていないが、おそらく定年退職前のリストラか早期退職組だろう。)
仕事も見つからず、家族からも邪魔物扱い。挙句の果てに、全財産を妻に持ち逃げされてしまう。途方に暮れた憲三は自殺を試みるが、自殺にすら失敗。
生き延びた事を機に、生きる事を決意。人里はなれた山奥に入り、サバイバル生活が始まる。
これまでとは違う世界に出会う憲三
気が弱く損をしてきた憲三は、警察の失礼な尋問に対して生まれて初めて激怒する。
他人に対して感情を激しくあらわにした。そうすると、無礼な態度だった警察官が素直に謝るのだ。
憲三「目の前の人間に本気でキレたことってあったかな…どうせ死んだんだ。いっぺんキレてみようかな。」
憲三「なんなんだ・・・このリアクションは。初めての経験だぞ・・俺の視界から初めてみる風景だ・・・怒ってみるとこんなことも起きるのか。」
憲三はこの時を機に表情が変わり始める。これまで、生きてきた自分の不遇なあり方と決別する。
山の中でのサバイバル生活
憲三は山の中に、手作りの住居を構えそこで田畑を耕し、自給自足の生活を始める。時にはイノシシを捕まえ、その肉を食ったり、弓矢で鳥を打ち落としサバイバル生活を続けた。
その暮らしのなかで憲三の顔つきは更に変化して行く。初めに登場した冴えないサラリーマンの憲三とはまるで別人だ。
とことん生きると決めた覚悟が憲三を変えた。
岡田憲三はこれまでの人生でおそらくなんとなく生きてきたのだろう。
生きてはいるが、ただ生きているだけの状態だ。これは案外多くの人に当てはまるのではないだろうか。そういう自分自身もなんとなく生きてきている組だ。閉塞感を感じている自分にこの岡田憲三の生き方は響いてきた。
感想
職場などで良く自分の感情を表に出す人がいる。良いか悪いかは別にして、自分は彼等を見て時にうらやましいとさえ感じていた。「ああ、感情をだせていいなぁ。」と思うのである。
自分を押し殺して生きる人生は、従来の岡田憲三の生き方である。自分自身、新しい感覚を掴んでみたいと思っていたので非常に共感でき、面白い作品だった。